現場の声

民主党山井和則衆議院議員のメルマガより転載。

次に、障害者自立支援法案。いよいよ昨日28日から参議院厚生労働委員会で本格的な審議が始まりました。ここでは、2ヶ所の生の声を紹介します。

まず最初に、知的障害者の通所授産施設での声です。今までのメールマガジンでも書いてきたように、この施設では知的障害者が平日、陶器作りや織物や箱作りをすることによって毎月の工賃(月給)を1万円もらっていました。この1万円の工賃は、知的障害者の方々にとっては、かけがえのない生きがいでした。
しかし、自立支援法により来年1月からは食費も含めて、月2万円を逆に利用者と家族が施設に支払うことになります。工賃と差し引きすれば、逆に月1万円支払わねばならなくなります。このことについて、施設を利用する知的障害児の保護者が涙ながらに言っておられました。

「子供の声ですねん。聞いて下さい。『お母ちゃん、僕ね、工賃、1ケ月休まんと1万円やのに、来年から園に一杯一杯お金払わんと通えへんようになるんか? お父ちゃん死んでおらへんし、家にお金ないやろ、家に居とくほうがましやな』。
知恵が無いこんな子が自立支援法案を心配しており、つらいです」

この施設の職員さんも、「自立支援法で発生する費用負担が通所施設の利用を減らし、引きこもりの障害者を増やす事になれば大変です。不安だらけです」と、嘆き悲しんでおられます。
また、ある精神科クリニックでも、今回の自立支援法によって、自己負担が大幅にアップしかねない精神障害者のご家族の方々に対して、自立支援法の説明が行われました。クリニックの精神科医の方が次のように書いておられます。

発達障害でかつ家庭内暴力や感情の浮き沈みが激しく、引きこもりになっている31歳のお子さんを持つお母さんは、単独で受診をして、お薬をもらい、子どもさんに飲ませています。必死でお子さんが通院できるように、暴力におびえながらドクターの言葉を子どもさんに伝えています。今でさえ、通院を拒否している状態なのに、自己負担がアップすればますます来にくくなります。
また24歳、うつのお子さんをもつお母さんは、子どもにデイケアに通ってもらいたくて説得していますが、このお子さんも、「お金がかかるから行かない」と言っています。
「今後この法案が通ってしまったら1月から自己負担が発生するご家族が増えると思います。もしかしたら、お子さんがご家族に遠慮して、受診をしなくなったり、デイケアの回数を減らすかもしれません。そんなとき、ご家族はお子さんが遠慮をしているのだということをよく理解頂いて、もし、ご家族全体で自己負担を継続することが困難であれば仕方ないですが、お子さんのために払ってもよいということでしたら、そのことをお子さんに伝えてあげてください」と、ご家族に言ったところ、数名のお母さんが泣いてしまわれました。

「これ以上子どもに遠慮をさせるなんて、耐えられない」「なんて気の毒な子どもなんだ」という涙です。「私たちをこんなに苦しめる法案ってなんなんだ」 という悔し涙でもあったかもしれません。 精神障害精神疾患のお子さんを見守るご家族は、並大抵の苦労ではありません。忍耐、忍耐、の連続です。親御さん自身の精神衛生も大変悪いです。ご家族の涙は本当に心に刺さりました。本当に悔しいです。

今日は2つのケースを紹介しましたが、この自立支援法案が成立すれば、今後、全国数千か所の障害者施設、作業所、グループホームや精神医療の現場などで、同じようにご家族やご本人、そして、現場のスタッフが涙を流すことになります。今回紹介した例のように、障害者の引きこもりが増えるでしょう。それは、家庭崩壊や家庭内虐待、症状の悪化、自殺や心中につながりかねません。つまり、障害者の自立を「阻害」します。

本来、政治とは悲しい涙を減らすためのものです。これだけ全国で障害者や家族を泣かせる法律とはいったい何なのか?何が障害者自立支援法だ! この法律のどこが「自立支援」なのか?この「天下の悪法」は、衆議院が解散すれば、廃案になります。いま、衆議院が解散されるかどうかが議論になっています。しかし、自立支援法の廃案のために、全国の障害者やそのご家族が今、郵政法案の否決、衆議院の解散を望んでいるといっても過言ではありません。