障害者「自立」支援法は「屈服」を強いる道具

社民党阿部知子衆議院議員のメルマガより転載。

虚偽のデーター作成はじめ、恣意的なデーター利用など、全く「事実」や「現状」を見ない、また見ようとしない厚生労働省の手による障害者「自立」支援法案が衆議院厚生労働委員会で可決されて一週間が経つ。
一体何のため、誰のための法律であるのか、5月に始った審議の当初から疑問であった。とにかく財政難故、障害者の福祉サービスにかかる費用の公的負担分を削減したいという「金」の話ばかりが先行して、そのためには障害者本人や家族の自己負担を増やすという解決策しかないという主張が繰り返され、厚生労働大臣からも答弁され続けた。

財政が苦しいが、収入のおぼつかない障害者からも「金を取ればよし」、あるいは家族がそれを本人に代わって払えばよしとするなら、そもそも障害者福祉「施策」など必要ないし、それ以上に政治すらも必要ない。弱い者・働けない者にもまず「自助努力」を求めて、一体何をしようというのか。

私は審議の冒頭で、まず我が国の障害者福祉予算がGDPに占める比率がOECD先進諸国中、破格に低いこと、あの市場経済万能の国アメリカよりも下回る事実を指摘した。ちなみに日本の子ども・家庭関連予算と障害関連予算は群を抜いて少ないのである。本来社会が担うべき障害者や子どもへの支援を全部家族の私的負担に振り替えて良しとしてきた我が国は今、少子化問題とともに高齢化と密接不可分の障害者問題でも立ち往生している。

現在でも三障害あわせて(精神・知的・身体障害)655万人という厚生労働省の発表に則っても、その半分は65歳以上の高齢者である。いわば障害者施策は高齢社会の核心的問題でもある。そんな時代に、重度の障害者がサービスを多く利用する人ほど自己負担が大きい法律をつくることで、何か解決するのだろうか?にもかかわらず、審議の最後まで厚生労働省はこの法案の骨格(定率負担・応益負担)を変えることなく、おまけに医療分野にまで負担増を拡大した。

精神障害通院における32条、透析や身体障害に対する更生医療、子どもの重い先天性の疾病の手術などにかかわる育成医療などにはいずれも疾病の治療(医療)は従来公的負担制度を作ることによって、障害や状態の悪化を予防するという重大な役割を担ってきたのである。
医療費も本人負担もしくは親や家族の負担増、福祉サービスも応益負担、負担づくめの仕組みばかりが作られて、しかしその根本となる障害者の所得の保障には全く道筋がつかない。低所得者生活保護に「落ちそう(…)な人」(厚労省の言葉)には、それなりの減免措置をしますと厚生労働大臣は繰り返すが、負担の減免は所詮救貧的発想に基づくものであり、「障害者の権利」とは全く異なるものである。そればかりか障害者や家族が減免(割り引き、負担の免除)をお願いにいくという行動を通じて、厚労省は障害者の生殺与奪を握り、精神における屈服を強いる構造を作り上げる。それは障害者「自立」とは程遠く、障害者の心身の自立を阻害するためのものに他ならない。

おまけに今後は、「障害者でも自己負担しているのだから」という形で、他の母子家庭支援や生活保護などの福祉施策における自己負担に大きく道を開くことになるだろう。
福祉施策を後退させるための重石として、そして屈服の道具としての法律に心から怒りを覚え、参議院での成立をどうしても阻止したい。

自立支援法案、7/22に参議院で趣旨説明・重要度が最高ランクへ

民主党山井和則衆議院議員のメルマガより転載。

衆議院を通過した自立支援法案に対する厳しい、厳しい批判を山のように聞きました。まだ、参議院で継続審議になる可能性はありますが、「天下の悪法」です。
この法案で障害者福祉現場は大混乱。不安のどん底に陥っています。法案の責任者である尾辻厚生労働大臣厚生労働省の担当者が、秋で交代するというような噂が出ていますが、そんな無責任なことが許されるはずがありません。
来年1月からの自立支援法のスタートで、現場は自己負担アップなどで大混乱になるのは確実ですから、そこまで責任を持つのが当然でしょう。

なお、参議院では、7月22日(金)12時からの本会議で趣旨説明が行われます。民主党からは平田健二参議院議員が質問する予定です。
そして、衆議院では「重要議案」であった自立支援法案が、参議院では重要度が最高ランクの「重要広範議案」に格上げになりました。
その結果、22日の本会議でも尾辻厚生労働大臣のみならず、小泉首相も、自立支援法案に対して、答弁することになりそうです。この自立支援法案も元はと言えば、小泉首相の「自己責任路線」の究極の姿です。小泉首相がどんな答弁をするかが楽しみです。

そして、参議院厚生労働委員会では、翌週の7月26日(火)から自立支援法案は質疑に入ります。参議院厚生労働委員会は、毎週、火曜日と木曜日が定例で、参議院では地方公聴会も行われる予定です。早ければ8月9日(火)に採決になるかもしれませんが、審議が混乱して長引いても、11日(木)で委員会で可決し、12日(金)の参議院本会議で可決というスケジュールが、この通常国会で自立支援法案が可決するリミットです。
逆に言えば、11日(木)に委員会で可決できなければ、秋の臨時国会まで継続審議になります。何よりもこれから8月上旬までは、郵政法案で参議院はもめる可能性がありますので、その影響が、自立支援法案の審議にどう出るかは不明です。
とにかく、民主党も「このままでは自立支援法案を通さない」という姿勢で戦います。

【転載歓迎】<私たちの魂の叫びを聞け!! “1人ひとりの声” プロジェクト>開始しました!  

精神保健福祉法32条制度」の改悪を含む「障害者自立支援法」は、ついに7月13日、傍聴席からはげしい怒号が飛び交う中、与党(自民・公明)の賛成多数により衆議院厚生労働委員会で可決されました。法案は、15日に衆議院を通過、参議院へ送付されました。


しかしまだ参議院の戦いが残っています。


…残っているどころではなく、新たな「自立支援医療費」の支給認定条件などが政令厚生労働省令でどのように規定されていくのかという問題、あるいは、厚生労働省32条利用者に関して根拠のないデータを提示していた問題などなど…、課題は山積みなのです。
そこで当グループでは、「私たち一人ひとりの声を合わせて大きな力にして行こう!」と、以下のような2つの新プロジェクトを開始しました。
どうぞみなさま、ご協力、よろしくお願いいたします!
      32project グループメンバー 一同

  • 私たち1人ひとりの思いを文字に!【特設掲示板プロジェクト】

当グループでは、「私たちの魂の叫びを聞け!! "1人ひとりの声" 〜7.15 障害者自立支援法案の衆議院通過を受けて〜」と題する特設掲示板を設置しました。

障害者自立支援法案」の衆議院通過という事態を受けての、また報道に接しての、あるいは、衆議院での審議の様子を見聞しての…、私たちのさまざまな思い、怒り、悲しみ。


そういった私たち1人ひとりの「魂の叫び」を、この掲示板に文字としてつづり、訴えていきませんか?

どんな思いも、それがあなたの叫びであるならOKです。
ぜひ、一人でも多くの皆さんからの書き込みをお待ちしています。
(なお、この掲示板は主に32条制度の関係者・利用者、家族・友人、医療・福祉関係者等を想定して設置しましたが、それ以外の方もどうぞ自由にご利用ください。)

自立支援法案の委員会可決・衆議院通過についての思いを、すでにご自分のサイトやブログで記事にされている方! ぜひこの32projectブログのトップ記事あてにトラックパックを送って下さい。

どうぞ、ご協力をお願いします!

 32条改悪反対グループ「32project<患者と現場の声>」
    Eメール   c32_project@yahoo.co.jp
  グループサイト http://www.32project.com
  グループブログ http://sea.ap.teacup.com/32project

民主党の見解

記事転載。

障害者自立支援法案が、13日の衆議院厚生労働委員会で障害者団体のなどの傍聴者、野党の反対の怒号の中、与党修正され可決された。この法案は、障害者が受けるサービスを応能負担とするもので、党は修正協議を続けていたが、与党が基本的な部分での修正に応ぜず、協議は中止となり反対した。なお、「障害者の範囲の拡大、すべての障害者がサービスの提供を受けられるように普遍化すること」などを内容とする付帯決議が全会一致で採択された。

 採決に先立ち、石毛硏子衆院議員が政府案に対して、五島正規議員が与党修正案に対して質問し、反対討論には園田康博議員が立った。
石毛議員はまず、新しい法律には新しい哲学・理念が必要だとして、「新しい哲学・理念をもとに新しい制度つくろうとしているとは思えない」と根本的な批判を展開。また、「障害者が不安を覚え、反対行動をしている人が延べ2万人を超えている」ことを紹介し、「若年期からの障害者の皆さんは、所得確保の機会を奪われ、与えられなかった人。所得機会を保障する政策をとってこなかったことに対する反省がない。全ての障害者を平等と考えてはいけない。なぜ定率1割負担なのか。対等・平等になっていないにも関わらず、なったかのような前提の法律だ」と重ねて批判した。これに対して尾辻厚労相は、「いきなり理想的なものはできないので、一歩一歩進めていきたい」などと答えた。

 石毛議員は続いて、福祉サービスの利用者負担での減免措置の拡大、障害程度区分などについて質問し、尾辻厚労相は検討するなどと答えた。特に石毛議員は、移動の権利について、障害者が社会参加するために必要不可欠だとして、そのための長時間サービス・パーソナルサービスなどに関して後退することないよう求め、「請求権に基づく個別のものとして保障を」と訴えた。西副大臣は、「柔軟に対応したい」と答えたものの明言を避けた。また石毛議員は、「この法律で、地域から家庭・施設に単身の障害者が戻ることはないのか」などと質問した。これに対して厚労省の塩田障害保健福祉部長が、「都市部と地方ではばらつきがある」などと答えたため、石毛議員は大臣に答弁の確認を求め、尾辻大臣は「家族・施設に戻らないように単身も含めて」と答えた。

 こうした応答に限らず、他の質問に対しても「検討する」や「これから実態を調査する」などとする答弁が多く見られたため、最後に石毛議員は、「なぜ答えを躊躇するのか。予算に合わせた抑制的な法律だ。何を躊躇してこんな法律をつくったのか」と、財政当局に遠慮し、障害者の社会参加・自立を促す基本精神を失った法案に対して厳しく批判を加えて質問を終えた。

 続いて質問に立った五島議員はまず、障害者の苦難の歴史に触れ、「砒素汚染地帯には戸籍に載ってない人もいた。学校に行けない子どももいた。兵庫・大阪・和歌山で不幸な子を産まない運動もあった。措置の時代があり、障害者基本法ができ、障害者も社会の重要な一員として、権利となった」として、与党の修正で根本が変わったのかを質した。八代英太修正案提出者(自民党衆院議員)は、「私も障害者。水の冷たさは触ってみないと分からない。私も体験して知った。完全参加と平等、21世紀は万人のための社会にしなければならない。そのために障害者基本法の理念を目的の項に掲げた」と答弁。しかし五島議員は、「その思いに応え得る法案か。政省令に委ねる、これから検討する、との答弁ばかりだ。(先ほどの与党修正にかかわる)大臣確認答弁も、ファジーなものばかりだ。財政と協議が整っていないのか、説得できる自信がないのか。この法案には障害者の明日の生活の不安に関わるものだ」と厳しく批判した。

 反対討論に立った園田康博議員は、「施設と家族への責任転嫁だ。国の役割は障害者基本法の流れを加速すること。支援費制度が財政的に破綻しようしているとして、家族と本人に負担を押し付けようとしている。本来は所得補償を構築し、普遍化すべきもの。社会参加を営むことができるようなサービスが不明なのに、対価を要求している。障害者8団体の意見を何のために聞いたのか。与党による4項目の修正は形式的で不十分なもの。この法律の対象者は誰か。生命と尊厳を考えていない。当事者の立場に立ちこの法案を認めるわけにはいかない」と民主党の立場を鮮明に訴えた。

障害者新法で負担増、家族らの不安

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3070914.htmlより転載。

1万1,000人もの障害者が厚生労働省前に集結し、声を上げました。「痛みを伴う改革」という小泉構造改革路線による負担増の波が彼らにも押し寄せようとしています。

国岡康雄さんは知的障害を伴う重度の自閉症です。康雄さんは思春期の頃から親の言うことを全く聞かなくなり、家庭で育てるのが難しい状況となりました。
「大変な時はどうしても精神安定剤を(康雄さんに)飲ませるということがありました」(母親の妙子さん)

18歳の時に母親の妙子さんら自閉症児の親が作った自閉症専門の入所施設「けやきの郷」に入りました。今は施設の作業所で解体の仕事をしています。現在70歳の妙子さんは自分が死んだ後の康雄さんの将来が不安でなりません。

障害者自立支援法はこれまで身体障害、知的障害、精神障害など障害別にバラバラだった支援策を一元化して、公平にすることを目指しています。しかし、この法律ではサービスの1割を自己負担、食費などは実費負担と、負担の増加が予想されます。
康雄さんの年収は障害年金の約99万4,000円のみです。支出は施設の利用料が年間59万7,600円、この他に将来の病気に備える互助会の費用など16万8,000円を負担しています。支出合計は94万1,049円、障害年金でかろうじて賄える額です。

ところが、自立支援法が導入された場合、新たに施設の食費、光熱費、医療費などの負担が生じ、障害年金の額を超えてしまいます。妙子さんは「今現在、私が年金だけで暮らしていますから、それはそれでいっぱいいっぱいですし、親がいなくなった時に子供が施設での金銭的な生活が保たれていくようにするには、ここへきて非常に不安になってきた」と話します。

「日本の福祉は全体的に薄すぎる。道路なんか作るより何よりもまず人間を考えてほしい」(けやきの郷・須田初枝理事長)

今月5日、厚生労働省前の日比谷公園に1万1,000人もの障害者が集まり、集会を開きました。



「親がいなくなってもおそらく1人で生きていかなくてはならないのなら、何もわからない赤ちゃんのうちにこの子の時間を止めてしまえば良かったと思ってしまうほど、この法案は残酷です」


法案は野党が激しく反対していますが、13日にも衆議院厚生労働委員会で採決される見通しです。日本の障害者施策は大きな転換点を迎えています。